05.10.4
注意・いつもは「ハイデリヒ」と表記するんですが、映画っぽく今回は「アルフォンス」と書いてみました。
「すぐに何とかできるだろ?お前なら」 エドワードはラジオを修理するかごとくに、簡単に作業であるかのような感じで要求した。 「何とか…って?」 「そう、何とか。早くしろ。」 またいとも簡単な言葉が返ってくる。 「何とかしろ…って、これをですか??」 側道に転げ落ち横転して、煙を吐き出す、今までエドワードが運転していた車を指差して、いつもは出さないはずの大声を上げてしまうアルフォンスであった。 「カーニバルに間に合わないじゃない?だから早く何とかしろ」 口角を少しあげて、にやっと笑う。 何とかしろって、出来ることと出来ないことがある! 何でこうもあなたは他力本願なんですか? そう続けて怒鳴ってやりたい。でも、 俺、自動車は動かせるけど、仕組みのことなんてわかんねーもん お前がヤレ って言葉が返ってくるのは、目に見えている。 「ようやくわかったか。手伝い位はしてやるよ」 車に向かって歩き出したアルフォンスに、エドワードはずっと組んでいた両手を解き興味本位に近づいた。 「無駄なことはしないんです…」 「何だよ、無駄なことって…?」 エドワードの言うがままに修理をしなければならないのはわかっているが、つい嫌味のひとつも言いたくなる。 「あなたに言いたいことは、それはスイスの山より高くありますよ。それを一つ一つ積み上げたって、この故障が直るわけじゃないんです!だから、いちいちあなたに突っかかる体力の無駄はやめたんですよ。仕組みがわからないんだったら、大人しくしていてくださいよ。まったく。」 嫌味を極上の笑顔を添えて、一言。 「…そうかよ…」 一瞬、頭に来たがそれがアルフォンスのただの嫌味であるのがよくわかっていたので、ここで言い返して作業を中断させるのは得策ではないと瞬時に判断する。 でも、ここまで言われて黙っているのは性に合わない…とエドワードはしばし考えた後に、横転したために見やすくなった車の側面に配線を確認して、これがこうなって…と独り言をつぶやいているアルフォンスの首根っこを掴み、自分に引き寄せた。 「エ、エドワーードさ、あん?」 思いがけない力に、思いっきり変な声を上げてしまうが、その後起こったことを理解したのは、自分からエドワードの唇が離れていくのを見えたときだった。 「これで頑張れ…」 そういうと、さっさと背中を向けて歩き出して作業の邪魔にならない場所へ行ってしまった。表情こそ見えないが、アルフォンスは、その耳が赤くなっていたのを見逃さなかった。 30分後 先ほどのエネルギー充填をして、頑張ってはみたものの。世の中には自分の力ではどうにもならないことってあるのだった。 「エドワードさん…?」 ちょっと離れた場所で、ずっと背を向けて座っていたエドワードに声をかける。 「直ったか?」 振り向いた顔を見て、思わず、なんだもう普通の顔してる…とちょっとがっかりをしてしまった。 「今確認したんですが…僕の力ではどうにもならないことが判明しました」 「え、?直ったんじゃないのかよ?」 エドワードは不服を隠さずに表情に出した。 「あなたねえ…。オイルタンクの底が抜けて、エンジンベルトは…これだけなら代用することは出来たかもしれないけど、リアシフトが完全に折れているんです!ここまでくると何も工具もない場所では直すのは不可能です!」 腰に両手を当てて仁王立ちで説明する。 「…じゃあ、さっきのは無駄ったのかよ…?」 目を少し斜め下に逸らせてボソッと言う。 「僕はして欲しいなんて、言った覚えはないですよ…?ああ、そうですよ、お得意の錬金術で直してくださいよ!」 つい売り言葉に買い言葉ではないけれど、ついいってしまった言葉だった。一瞬身をすくめたエドワードに気づいて、自分が言い過ぎたことを悔いた。 「直せなくて…ごめん」 やさしくエドワードを抱き寄せて、素直に謝る。 「さっきは…すごく嬉しかったんだよ。いつも僕からだったから…。こんな時なのに、本当に嬉しかったんだよ…。だから、期待に応えたかったんだよ。でも直せなくて、一番がっかりしてるのは…僕だよ…?」 と右ほほに優しく口付けしてささやく。 「ごめんね、直せなくて。でも謝ってもどうにもならないから、ヒッチハイクして先に進もう、あとで車は引取りに来てもらおうね。」 そういって、エドワードを離して、車道に促す。 なにやら物足りなげで見つめるエドワードに気づいたアルフォンスは 「続きは夜にしてあげるから」 と。 「ア、アルフォンス、俺はそんなの期待してないぞ!!」 心を見透かされて、一気に真っ赤になった顔を隠そうとせずに、右手を振り上げて怒り出す。 そんなかわいい反応全てがいとおしい。 このままあなたを、僕のものに出来たら。 将来を望むことが出来ない、この忌まわしい体。 でも願わずはいられない。 あなたの隣にいる未来を。 |
九月頭にモンゴルに行ってたときにできた話です。 モンゴルに何しに行ったって…ネタ考えに?とこたえてしまうほど、旅の道中いろいろ考えてました。 これは、首都ウランバートルからハラホリンという田舎の街に向かうバスが…故障した時に考えた話です。 まあ、故障とかガス欠なんてよくある話ですがね。一人旅で民間バスを使うとこんなことに出くわすのは日常茶飯事です。 その時に、乗っている乗客はぼーーーと待つしかないのです。日本人だったら絶対に文句のひとつでもつけそうですがね。 「どのくらい待たせるのよ?」「いつになったら出発するの?」とかいろいろ。 バックパッカーとか個人でアジアまたは中東を旅行した人ならわかってもらえる、文句を言っても何も変わらないし、進まない状況。 文句を言うだけ体力の無駄なんです。諦めて待つしかないんです。でも何とかなるもんなんですよ。 今回はガス欠だったので、通りかかった車にガソリン分けてもらっていましたが、それまで1時間砂漠で待機… 6時間予定だった道中は11時間の道のりでした。 まあ、よくあることですが、その「どう頑張って、どうにもならないんだよ〜!!」って感じの所を生かしてネタにしました。 でもさーーーーーー。「続きは夜にしてあげるから」ってハイデリヒは言うけどさ! ノーアという邪魔モンが…ち。続きがなくなっちゃうじゃん!!心底悔しい… |