05.8.26
些細なことがきっかけだった。 ある日の祭日の前夜、久しぶりに遠出をしようと1週間前に約束したので「明日どうする?」って、アルフォンスが聞いたのに。 「え?なんだっけ…?」とすっかり前にした予定を忘れていたエドワードだった… エドワードが約束を忘れてしまうなんて、今に始まったことではないけど、やっぱり何度も繰り返されるとアルフォンスだって怒るときは怒るのだ。 「お前のこと、忘れてたわけじゃないぞ!?」 「そうだよね…僕が兄さんが想うほど、兄さんは僕の事、想ってないもんね…」 とアルフォンスは寂しがってみた。 「な、なんでそうなるんだよ!お前だって、忙しい時かまってくれないじゃないか!おあいこだろ!?」 「気持が違うんだよ!僕はどんなときだって兄さんの事を忘れる事なんてないよ!」 「だから、忘れてないって言ってるじゃねえか!ただちょ〜っとまわりが見えなくなるっつーか…。」 「その回りが見えなくなっちゃうときこそ、僕の事考えてよ!」 …と嫉妬丸出しのアルフォンス。 「う…。ま、まあなんだ。俺のこと考えてる〜なんて言っても、本当かどうかなんて誰にもわかんないよな〜。口ではなんとでも言えるよな」 エドワードとしてはちょっと言い返してみたかっただけだった…のに… 「そうだよ、そんなこともわかんなくなるくらいに…兄さんのことが好きなんだもん。僕ばっかり…兄さんのことが好きで…」 いつも笑顔を絶やさないアルフォンスだが、この時ばかりは声を荒げる。エドワードの気持ちは…わかっているつもりではあるが、その思いゆえに不安になるのである。 「…アル」 自分が発した言葉は、アルフォンスにとって禁句であったことをそれを思い知る…。近くにいるからこそ、改めて言う事がなかったその言葉…。 「兄さんの馬鹿!僕の気持ちなんて…僕だけが兄さんを好きなんて…ずるい。こんなにも兄さんが好きなのに…」 エドワードをまっすぐ見つめる、アルフォンスの頬に流れる一筋。アルフォンスが涙を見せるのは、実に久しぶりである。その涙に、自分が何を言うべきかを…感じた。 「ごめん、アル…軽率な事言って…お前の気持ちはわかってる…でもお前…いつも余裕そうに見えるんだよ。だからこそ甘えてたのかもしれない…」 「余裕なんてあるわけないじゃない!兄さんが好きだからこそ…こんなにもいつも不安になる…いつ…僕の元から離れていってしまわないかとか…だからこそ、わがままを言ったらいけないって、冷静なふりをしているだけじゃないか!」 アルフォンスの涙は、堤防を失い流れ出る川のように次からあふれてくる。 エドワードは右手を伸ばし、アルフォンスの背に手を回し、優しく抱きとめる。アルフォンスは一瞬抵抗を示すもエドワードの力に身を任せる。そして、頬に流れた涙に口付けをして、それをついでに飲み込む… 「に、兄さん…」 「アル…お前にはお前だけだよ…お、俺は、言葉で気持ちを表現するのが苦手だから…何度もいえないけど…」 エドワードはそういうと、一呼吸おいて続ける。 「俺は、アルフォンスを一生、好きだし、愛してる。次に生まれ変わっても一緒にいたいな…」 恥らうような言葉ではあるが、エドワードは真剣である。その気持ちがアルフォンスに伝わる。 「に、兄さん…嬉しいな…気持ちを言葉にしてくれるのって…初めてだね…」 泣き腫らしためで、エドワードを見つめかえるアルフォンス。 「…これでも、恥ずかしいんだぞ…」 ようやく顔を赤らめ始めたエドワードを見て、アルフォンスはなぜだか、ほっとする。 そして今度はアルフォンスのほうから手を伸ばし、エドワードの頬に触れる。いとおしく何度もな ぜながら。 そして、二人の目が合ったのをきっかけに。優しく口付けを交わしたのであった…。 |
…恥ずかしい…尾久良さんとのチャットから出てきた話で、2パターン書いて、「さあ、どっちがいい?」と選んでもらって 選ばれなかったのでお蔵入りになっていた話。 短編なんですが結構お気に入りのお話ですが、今の私にはかけない話だ… |