06.5.8 UP
2005年 5月8日に 別名 鋼レポートサイトで限定アップした 小説です。
もちろん映画後悔前でしたので…
5月8日は 荒川先生の誕生日をエドの誕生日として…勝手に企画しているのでした。
「誕生日おめでとう!!兄さん!」 突然、アルフォンスが入ってくる。 「…へ?」 国家錬金術師 資格更新に必要な研究論文の提出のため、ここ数日間書斎に閉じこもっていたエドワード。文字の書きすぎで疲れた手と眼を休めるために、ひと段落して窓を見上げていたのを見計らって、アルフォンスが声をかけてくる。 「あれ?忘れてたの?今日は5月8日。兄さんの誕生日だよ!」 それを言われて、エドワードは天井に眼を移動し…思いついたように、ぽんっと手をたたく。 「あー、そうだった!忘れてたよ。でも、もう子供じゃないんだから、祝うって感じでもないだろうに?」 …そういう割には、今まで寄っていた眉間の皺もなくなり、口角を上げてにやっと笑う。 「はい!」 そう言ってわたすのは、小さなすずらんの花束。 「お前な〜。男に花束って…」 嬉しいくせに、なかなか素直になれないエドワード。照れ隠しをしつつ受け取る。 「5月8日の誕生花はすずらんなんだって。ヒューズさんが教えてくれたよ。グレイシアさんがお花を飾るの好きみたいでさ。あの家はいつ行っても、きれいに花が飾ってあるよね〜。そこで教えてもらったんだ〜。毎日違った花が誕生花になっている事を。以前招待を受けた時にね、兄さんがヒューズさんといろいろ話していた時に暇してたら教えてくれたんだ〜!そこの草原で生えていたものだけど、ちょっと飾るにはちょうどいいでしょ?」 エドワードは、すずらんを今までただのこの時期に見かける「ただの草花」と言う認識しかなかったのだが、自分の誕生日の誕生花である事を知り、なんとなく今まで以上に親近感を持つ。 「へ〜、ただの花だと思っていたのに、なんだかいいな〜、こんな小さい…のに…」 多分、「小さい花なのに可愛いよな」と続くであろうその言葉は、自身によって中断されている。「小さい」と言う言葉は、エドワードにとって他の対象物を表現する言葉であってもなんとなく引っかかるらしい。 それを察したアルフォンスはあえて何も突っ込むこともせずに、話を続ける。 「去年の誕生日から、一年お疲れ様でした!今年も一年頑張ってね」 「そうだな〜。誕生日はやっぱり節目だしな。後悔しない様に頑張るとするか!」 「そうだよ、その意気だよ。目標をちゃんと立ててね。」 もう、子供のように誕生日を無邪気に祝うとしではない。子供でいてもおかしくない年齢ではある二人ではあるが、それにはいろいろな事を経験しすぎてきた。子供ではいられないほどに。世間が、状況が。二人を子供でいる事を許さない。二人は大人になるしかなかった。 二人にとって。誕生日とは。 一年を無事に、元の身体に戻るために、諦めずにやってこれているか?それを振り返るための節目の日。本人にはそれが分かっているから、自分では祝おうとしないものだが、片割れにとっては。相手がこの一年くじけうることなく、元気でいてくれたことは、やっぱり祝いたくなってしまうのである。 「兄さん、論文もひと段落したでしょ?ご飯にしよう!ご馳走用意してあるから」 シチューだけでなく、今の時期にしか採れない食材を使った料理を見ると、研究に没頭している間に、自分さえ忘れていた誕生日をいかに楽しみして、祝おうかとしていたのが伝わってきて、嬉しくなる。自分が大切に思っている相手も同様に、その思いを返してくれる。それは人にとって最大の幸せでもある。 「…アル、ありがとうな。やっぱり嬉しいな。誕生日そのものより、アルが祝ってくれることが一番 嬉しいかな?」 「僕も嬉しいよ、兄さん」 なんかここまで言うと、お互い照れてしまう二人。しばし沈黙の時間が流れる。 「…そういえば2ヵ月後はお前の誕生日だよな〜。」 沈黙に耐え切れずにエドワードが口火を切る。 「そうだよ。忘れてないんだ!」 「当たり前だろう〜!大佐の誕生日は忘れても、お前の誕生日は絶対に忘れないって!」 「あー、それはそうかもね」 …ロイ・マスタング大佐が聞いたら、泣いてしまいそうな会話ではあるが。まあ、きっと「鋼のなんぞに、覚えてもらっていなくても、私の誕生日を祝いたいという女性は山ほどいるのだよ!」と反論がありそうだが。 「今回の論文も問題なく提出すれば、2ヵ月後には研究予算も山ほどもらえるはずだから、アル、誕生日に何が欲しい?何でも買ってやれるとおもうぞ?」 国家から支給される研究費は、あくまでも研究をするために使われる費用ではあるが…まあ、いいことにして。 「兄さん〜。無駄遣いはだめよ!」 「お前には苦労かけっぱなしだからな〜。たまにはいいじゃん?」 「うーん、でも僕今欲しいものは特にないな〜。」 欲しいものはない、これは厳密に言うと正確ではない。アルにとって欲しいもの。エドワードとずっと一緒にいる時間。でもこれは与えられるものではない。自分で得るものである。 「お前はな〜いつもそんな感じだよな〜。」 「うん」 でもふと思う。 「そうだ、兄さん、欲しいものと言うか。あえて言うなら、僕の誕生日を絶対に忘れないでね!」 「へ?それだけかよ…忘れるわけないともうけどな〜?」 「絶対ってところがポイントだよ〜。ちゃんと忘れずに、おめでとうって言ってくれる事!兄さんもさっき言ってたでしょう?祝ってくれることが嬉しいって。忘れたら…酷いことになるからね!」 菩薩の笑みを浮かべてアルフォンスは言う。 「大丈夫だって!任せろ!」 とエドワードの自信満々な台詞で誕生日の夜は更けていった。 ***後日談*** エドワードはその時、わかっていなかった。忘れずに覚えていることがエドワードにとっていかに難しいかを。一度熱中すると、暦も何もかも忘れてしまうエドワード。いくら大切の相手の誕生日でも、覚えていることはなかなか至難の業だ。それをエドワード自身も充分すぎるほどわかっているで、アルフォンスの誕生日の1ヶ月前から、忘れてはならない!というように壁にメモをして必死にアルフォンスの誕生日を祝おうとしているエドワードの姿が見受けられることになった。 アルフォンスにとっては。誕生日に祝ってくれることではなく、誕生日前から自分のことで頭を一杯にしているエドワードを見ること、それが最高の誕生日プレゼントであった。 5月8日の誕生花「ドイツスズラン」花言葉は「純白」 5月8日の誕生石「エメラルド」 「山をも動かす強大な意志の持ち主」 |
今、読み直して…かなり恥ずかしい…ですが、結構好きな作品です。 私の誕生日に関する気持ちってまさにこんな感覚です〜 これの対になる アルのお誕生日バージョンの話…も寝たとしてあるのですが…いつかかければいいな〜。 |